2011年7月3日日曜日

単位の小事典

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もう一冊の科学啓蒙書

やはり、高木仁三郎先生が書かれた、もう一冊の科学啓蒙書。「元素の小事典」はすごくいい本だけど、こちらは普通にいい本。とはいっても、単位っていうのは、おろそかにしていると、わけわかんなくなっちゃうし、単位全般について、読み物になっている良い解説書っていうのは他にあんまりないから、勉強をする上ではこっちの方が大事かもしれない。もっとも、この本についてちょっとだけ書いておこうと思ったのは、勉強についてのことではなくて原発事故関連だ。

原発はある意味原爆よりおそろしい

今回、原発事故が起きた時、ヒロシマにやナガサキにくらべればたいしたことないよ、みたいなことも言われていたよね。それが間違いだということが、この本の中、エネルギーを測る単位を記述した項目に明瞭に書かれている。

最近は「出力100万キロワットの原発」というような表現がよく新聞に出てきます、これは毎秒1000,000,000(10億)ジュールの電気をつくっている原発のことです。なにか、ものすごく大きい感じがしますね。ところが、これでおどろいてはいられません。実は、この原発では、毎秒30億Jほどの核反応による発熱があり、その3分の1ほどが電気になっているのです。残りの3分の2、つまり毎秒20億ジュールは温排水として、海に捨てられているのです。この大きさの方におどろきませんか。
ついでに述べておくと、広島に投下された原爆は、爆発威力が15キロトンだったとされます。これは、TNT火薬にして、15キロトン、すなわち15000トン分の爆発ということですが、これはおよそ70兆ジュールの発熱にあたります。これは核分裂反応による発熱で、それがあの広島の大破壊をもたらしたのですが、このエネルギー量は100万キロワットの原発が約7時間で発生する量に相当します。ということは100万キロワットの原発は、広島原爆を1日に3回あまり爆発させる(制御した形ですが)だけの核分裂をし、それに相当する燃えかす=死の灰を出していることを意味します。仮に1年300日原発が稼働するとすれば、広島原爆千発分の死の灰が発生することになり、これが後々まで残る放射性廃棄物(核のゴミ)問題として、いま人類が頭を悩ます問題の一つになっているのです。pp76-78

今回の事故でも、水素爆発は起きたけど、核爆発が起きたわけではないから(3号機では少なくとも核反応はおきてたみたいだけど、爆発だったのかどうかは分からない)そりゃあ、影響のしかたは全然違うけど、まき散らされた放射性物質の量という意味でいえば、ヒロシマ、ナガサキよりはるかに大きいし、これからももっと大きくなる可能性があるんだ。というのは、福島第一原子力発電所の原発の出力は、1号機が46万kW、2から5号機78.4万kW、6号機が110万kWだ。ということは、運転していた、1号機から3号機までがあわせて約200万kWで、毎日、広島原爆6発分の放射性廃棄物を作ってたってことになる。これもいつか書ければ書くけど、放射性廃棄物の処理っていうのはぜんぜんめどがたってなくって、とりあえず、使い終わった核燃料っていうのは、原発の横にある貯蔵プールにため、そこがあふれれば、中間貯蔵施設に送るってことをやってる。フランスやイギリスの処理施設に送って、プルトニウムを取り出すなんてこともやってるけど一部だけだし。処理したからってあぶなくなるわけじゃない。今回、事故が起きた時に運転していた1号機から3号機の炉心には、広島原爆にして6X(運転日数)発分の放射性廃棄物がたまっていたわけだしそれぞれの原発の横の燃料プールにはたぶんそれ以上たまっていたはずだ。正確な量はわかんなくても、ものすごい量だし、一部漏れ出しただけでもたいへんなことだってことが分かるよね。そもそも運転していなかった4号機では燃料プールが原因で爆発が起きたわけだし、運転していなくても十分おそろしかったわけだね。

 

ベクレルとシーベルト

僕がこないだからはまっている、制服向上委員会の「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」にも、

それはそれは 習わない言葉が溢れ
ベクレル セシウム メルトダウンにタービン建屋
モニタリングに 高い マイクロシーベルトもう

なんてのがあるけど、この中の、ベクレルとマイクロシーベルト(=10-6シーベルト)ってのが単位で、この2つの言葉については、この本をちゃんと読んでおいた方がいい、その理由もこの本に書いてあるので、最後に引用、

時代とともに新しい概念や単位に適応しなくてはならなくなったことに、原子力に関する単位があります。これは本章の冒頭で述べた地震に関する単位と同じで、あんまりうれしいことではありませんが、うまいつき合いをしておかないと、命に関係してきます。pp.89

そう、命にかかわるんだよ。